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東京高等裁判所 昭和50年(行コ)52号 判決 1975年10月28日

控訴人(原告) 曾我新助 外一名

被控訴人(被告) 新潟県知事

主文

本件控訴を棄却する。

控訴費用は控訴人らの負担とする。

事実

控訴人らは、「原判決を取り消す。本件を新潟地方裁判所に差し戻す。訴訟費用は第一、二審とも被控訴人の負担とする。」との判決を求め、被控訴人は、控訴棄却の判決を求めた。

当事者双方の事実上の陳述及び証拠関係は、原判決事実摘示のとおりであるから、ここにこれを引用する。

理由

当裁判所もまた原判決と同じ理由で本件認可の取消しを求める控訴人らの訴えは不適法であり、その欠缺は補正することはできないから、これを却下すべきものと判断するので、原判決の理由をここに引用する。

したがつて、控訴人らの訴えを却下した原判決は相当であつて、本件控訴は理由がない。

よつて、本件控訴を棄却し、控訴費用は敗訴の当事者である控訴人らに負担させることとして、主文のように判決する。

(裁判官 豊水道祐 舘忠彦 安井章)

原審判決の主文、事実及び理由

主文

原告らの訴を却下する。

訴訟費用は原告らの負担とする。

事実

第一、当事者の申立

一、原告ら

1 訴外国府川左岸土地改良区(以下単に訴外改良区という。)の原告らの別紙目録記載の賦課金等の徴収につき被告が昭和四四年一二月二四日付でした認可(以下単に本件認可という。)を取消す。

2 訴訟費用は被告の負担とする。

二、被告

(一) 本案前の申立

主文同旨

(二) 本案前の抗弁

本件認可は、土地改良法第三九条五項によるものであり、取消訴訟の対象とならないものである。即ち、右認可によつて土地改良区が滞納金額について地方税の滞納処分の例による処分をなしうることになるだけであつて、認可そのものによつて滞納組合員の権利義務に何らの具体的な法律上の効果を生ぜしめるものではない。

(三) 本案の申立

1 原告らの請求を棄却する。

2 訴訟費用は原告らの負担とする。

第二、原告らの主張

被告は請求の趣旨記載のとおり土地改良法第三九条五項による認可をしたが、右認可は次の理由により違法であるから、取消されるべきである。即ち、

一、昭和三九年一〇月一二日原告らと被告は確約書を作成して「国府川左岸用水改良事業第二期竹田川地区に対する工事費負担金(佐渡郡真野町の町民以外の者の当該地区内の関係耕作地の負担金を除く)の徴収は真野町長に委任して行い、国府川左岸土地改良区をトンネルとして経由し、新潟県へ納入するものとする」旨を定め、原告らと真野町長は覚書を作成して土地改良区の竹田川地区の工事費徴収につき「真野町は国府川左岸土地改良区の第二期竹田川水系の用水改良事業の計画面積より真野町民以外の者の当該地区内の関係耕作地の面積を除いた地積(反別)に賦課徴収する」旨を約した。

二、右確約書及び覚書の趣旨は、土地改良法第三八条の規定にかかわらず、被告が前記県営工事の費用の原告ら負担金の徴収事務を真野町に委任する趣旨である。

第三、被告の認否

一、原告の主張一は認める。

二、同二は争う。右は土地改良区が真野町に委任することを定めたものである。即ち、確約書は、第二期竹田川地区工事費の分担金(同法第九一条一項、四項、第九〇条四項)に充てるための賦課金等を徴収するに当つて訴外改良区が同法第三八条により真野町に委任して徴収する旨を定めているのであるが、真野町が右委任に応じないので、結局右賦課金の徴収は同改良区が行うべきことになつたものである。

なお、被告は、昭和四四年一二月二四日滞納処分認可を行う前後に、数回にわたり真野町長及び同改良区理事長と協議し、確約書の履行を要請しているが、真野町議会の議決を得ることが困難との理由で真野町の了承が得られなかつた。

第四、被告の主張

本件認可は適法な手続を経て適法になされた。即ち、

一、原告らに対する別紙目録記載の賦課金の賦課徴収の方法については、土地改良法第三六条一項、第三〇条一項六号、訴外改良区定款第二六条に基き、

昭和四一年度賦課金については同年三月三〇日

昭和四二年度賦課金については同年三月二九日

昭和四三年度賦課金については同年三月二九日

それぞれ同改良区総代会の議決を経ている。

二、原告らは定期内にその履行をしないので、訴外改良区は原告らに対し、

昭和四一年度第一期分については同年八月二一日

同     第二期分については同年一一月三〇日

昭和四二年度第一期分については同年八月二一日

同     第二期分については同年一一月二一日

昭和四三年度第一期分については同年八月二一日

同     第二期分については同年一一月二〇日

それぞれ同法第三九条一項所定の督促を行つた。

三、原告らが右督促で指定する期限までに完納しないので、訴外改良区は真野町に対し、昭和四四年九月二六日同条三項によりその徴収を請求したところ、同月三〇日同町から請求に応ずることができない旨の回答があつた。

四、訴外改良区は被告に対し、前記賦課金及びこれに関する過怠金、延滞金につき、昭和四四年一〇月八日同条五項による認可を申請した。

第五、被告の主張に対する原告らの認否

被告の主張一は争う。同二、三は不知。同四は認める。

第六、証拠<省略>

理由

被告が、土地改良法第三九条五項による昭和四四年一二月二四日付本件認可をしたことは当事者間に争いがない。

本件認可は、新潟県知事の訴外改良区に対する行為すなわち行政庁間の内部的意思表示にすぎず外部に向けて表示せられるものではなく、同改良区の組合員である原告の権利義務に直接の関係がある行為ではないから、行政事件訴訟法第三条二項にいわゆる行政庁の処分その他公権力の行使に当たる行為ということはできない。

よつて、本件認可の取消しを求める原告らの訴は不適法であるからこれを却下することとし、訴訟費用の負担につき民事訴訟法第八九条、第九三条一項本文を適用し、主文のとおり判決する。

別紙目録<省略>

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